「バルト諸国勉強会」の紹介
エストニア、ラトヴィア、リトアニアの歴史・政治・社会などに関心を持つ研究
者が集まり、数ヶ月に1回程度の頻度で基金事務局スペースを利用した勉強会を 続けています。メンバーは志摩園子先生(東京成徳大学)を中心に、今村労さん
(東海大学)、大中真さん(桜美林大学、秋野基金会員でもあります)、小森宏 美さん(国立民族学博物館地域研究企画交流センター)と私の5名。私は中央ア
ジア研究を本格的に始める以前、デンマークとリトアニアに滞在した経験から、 また旧ソ連諸国の体制移行比較に関心を持っていることから仲間に加えてもらっ
ています。1998年から順繰りにメンバーの勤務先・在籍校で定期的に勉強会を開 いてきましたが、「秋野豊賞」受賞者の活動に基金事務局スペースが開放されて
以来、過去2回そこで勉強会を開催しました。以下はその概要です。
2002年5月18日には大中さんに「バルト諸国のEU加盟問題」と題した報告をして いただきました。この報告は、既に日本国際問題研究所より出版された外務省委
託研究報告書『欧州中堅国の対EU政策』に収録された同名の論文に基づいたもの ですが、昨年のブリュッセル欧州理事会でバルト諸国の2004年EU加盟がほぼ確定
的になった経緯や原因について、プローディEU委員長の野心、ロシアのプーチン 政権による対米協調強化の影響など、論文よりも踏み込んだ興味深い仮説提示と
分析をしていただきました。
また、7月27日には湯浅が「バルト諸国の大統領制」と題して報告をしました。 これはバルト諸国の政党システム比較の準備作業として、3国の憲法に記載され
ている大統領の権限や内閣・議会との関係について検討し、政治制度が政党分布 や議会のパフォーマンスに及ぼす影響や、「半大統領制」をめぐる議論への示唆
について考察を試みたものです。
独立後の10年以上を経て、バルト諸国には大規模な武力紛争こそありませんが、 ロシア人をはじめとする国内の少数民族問題、NATOやEU拡大に関するエリートと
一般国民の意識の乖離、民主主義の定着と実践など、日本ではあまり知られてい ない体制移行をめぐるさまざまな現象が顕在化しています。ユーラシアのなかで
欧州とスラブが接する地域として、今後もバルト諸国に注目していきたいと思い ます。