インターン体験記
第一回秋野豊賞をいただいてグルジアで現地調査を行い、その調査に基づいた修士論文を提出、2001年7月にブラッドフォード大学の修士課程を修了しました。グルジアの事例を取り上げた論文の一部は改訂され、ブラッドフォード大学とNGO(Saferworld、在ロンドン)より刊行予定です。修士課程を修了後、現在は同大学の博士課程に在籍し、グルジアとセルビアにおける治安維持組織の比較研究をしています。これと平行して、今年1月末までの約7ヶ月間、ドイツのBonn
International Center for Conversion (BICC)でインターンシップを行いました。所属は研究調査部門で、紛争地帯の小型武器に関連する調査研究プロジェクトに加わりました。2月からは、スイスのジュネーブにある国連軍縮研究所(UNIDIR)で、インターンとして、軍縮問題、平和構築活動といったテーマに関わっています。今回はまず、ドイツでのインターンの経験を簡単にご紹介したいと思います。
BICCは旧西ドイツの首都だったボンにオフィスを構える、非営利の国際シンクタンクです。冷戦構造が終焉を迎えて多くの軍事施設・技術が閉鎖または非軍事目的への転用へのプロセスをサポートするため、1994年に設立されました。現在は6つの主要テーマ(軍事費の削減、軍事開発研究の方向転換、軍事産業の転換、元兵士の武装解除と市民生活への統合、軍事基地閉鎖と再利用、余剰武器のコントロール)に沿って、研究活動、プロジェクトのノウハウ提供などを行っています。私が特に担当したのは、紛争地の小型武器流通に関する情報管理・提供でした。BICCでの日常業務は主に、小型武器回収・兵士の動員解除・余剰武器の流通や処理についての情報収集・管理・提供、小型武器関連情報ホームページの内容更新・管理、個別プロジェクトのバックグラウンド調査とレポート作成等でした。
現在の紛争地帯で銃口を向けられ銃弾の犠牲になる者の95%以上は、非戦闘員の一般市民です。そしてそのほとんどが、短銃やライフルなど小型武器の犠牲になっています。また、いわゆる紛争地に限らず、南アフリカやブラジルなどでは小型武器による犯罪も多発しています。紛争・犯罪のケースを合わせると、一年間の犠牲者の数は約50万人といわれています。加えて、比較的操作が簡単で軽量、低価格で入手可能なこれらの武器は、子どもや女性等の戦闘への参加も可能にしてきました。アフリカのリベリアやウガンダ等では、子どもを強制的に徴兵し、襲撃の際の最も危険な先発隊に使うということもなされています。また小型武器は、暴力の道具としてのみでなく、麻薬などとともに密売ルートを通じて流通することで、組織的犯罪組織や場合によっては警察・税関職員の利益増収へ加担しているケースもあります。銃やライフルそれ自体は暴力・紛争の原因にはなりませんが、その引き金を引く土壌があり、結果生命が失われるという現実がある以上、こうした武器の削減を含めたコントロールはなされるべきでしょう。2001年夏にはニューヨークで国連小型武器会議が開かれ、今年1月には東京でそのフォローアップのための会議も開かれました。
インターン期間中に関わった主な活動は、以下の通りです。
-
国連開発計画「人間開発報告」2002年版のための、バックグラウンドペーパー作成。平和構築プロセスへの市民参加とアカウンタビリティの問題ついて。
-
小型武器の流通と地元社会への被害についてのレポートを、ウガンダとリベリアのケースに関して作成。
l 小型武器関連の情報ホームページ、ヘルプデスクのウェブサイトの改善 ・内容追加。
-
沖縄のNGOとの、軍事基地の環境問題に関するミーティング。
-
世界貿易センター爆破事件以後のアメリカ合衆国対外政策に関する勉強会(週一回)。
-
l アフガン復興に関するワーキンググループへの参加。2001年1月東京で開催の世銀とUNDPによる復興計画会議を念頭に、プロジェクト計画書をドイツ開発局GTZへ提案。
-
年間報告書ConversionSurveyの為のバックグラウンドレポート作成。2001年における余剰武器の主な流通ルートとその背景分析。
このように、BICCでは小型武器が引き起こす問題、これら武器の流通・回収・破壊などの現状を、プロジェクトの実務者に近い視点で捉えることができました。紛争問題を包括的・マクロレベルで議論していた大学院とは違って、実際のプロジェクトを施行する際には何が可能で、また限界は何なのか、ということを考えさせられました。また、BICCと協力関係にある他のNGOや研究者とも繋がりをもつことができ、NGOがどのようにプロジェクトを獲得していくのかなどの運営面も身近に観察することができました。アフガン復興会議の前には、ドイツの開発援助団体の対応を近くで見ることができ、その機動性と組織化の様子を観察する機会に恵まれました。小型武器回収・兵士の動員解除や治安維持機構の再編成などの政治的問題を、BICCがドイツ政府や関係省庁にロビー活動して実施を働きかけていたのは、日本国内のアフガン復興への関わりと興味深い対照をなしていたと思います。
私自身の分野で見た限りでは、欧州では研究者・NGO関係者は、ある組織に属していても、関連組織全部を含んだ業界のなかで、さまざまな組織や人と密に協力し合っていました。他の団体のプロジェクトであっても、足りないところは他の組織の資料や人材で補ったりして完成させていく、ということが国連機関・NGO・大学の間で行われています。長くて数年間の契約で次の就職先へ移っていく雇用形態であるため、こうした普段からの協力関係・ネットワークは、スタッフ個人個人の再就職の際も、重要であるようです。
|