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評者:下山高正
北朝鮮の核実験により、核の脅威への関心があらためて高まっている。だが、核の脅威には、実はいくつかの種類があり、どれが重視されるかは時代や国によって異なる。
 冷戦期には、核の脅威の中核は、核保有国間の核戦争の恐怖であった。それに付随して、「核のボタンに手をかける」国の数の増加への不安(核拡散問題)が存在した。
冷戦の終結により、核戦争の蓋然性がほぼ消失すると、代わって関心を集めたのは核拡散であった。元来想定された拡散シナリオは、原子力平和利用を進める不特定の先進国による、技術や施設の軍事転用であったが、冷戦後には、
少数の特定国(大半は「ならず者国家」的な非先進国)の核兵器開発が、懸念の主な対象となった。これに伴い、旧ソ連等の「ルース・ニューク」(管理のずさんな核兵器や核物質)の流出への懸念も高まった。 (続きを読む
 

評者:下山高正
冷戦後の日本の安全保障政策は、変化を中心に語られることが多い。だが、実は、伝統的な政策を変更する努力と、その根幹をできるだけ変えない努力という、両立困難な作業が並行的に進んできたことが、その最大の特徴なのだと
思う。日本人には、国際環境の激変が安全保障路線の修正を不可避にしたという認識とともに、専守防衛や非核政策といった、従来の平和主義の基本精神は極力維持したいとの願望も強かったのである。
 とりわけ変化がないのは非核政策であろう。冷戦後、北朝鮮の核開発の深刻化に伴い、海外では、北が核を持てば日本の核武装も必至との見解がたびたび表明された。98年の印パの核実験は、新規核保有国への国際社会の反応の手ぬるさを示した。そして05年2月、北朝鮮は、ついに核保有を宣言した。にもかかわらず、日本の行動は、リアリストを中心とする国際政治の「常識」に反し続けている。政府に非核政策を見直す兆しはなく、国民の間でも核武装への支持は低い。なぜ日本は、非核の道を選び続けるのか。(続きを読む

 

評者:湯浅剛
アメリカを「帝国」と表現して、その行動や現代の国際政治を理解しようとする議論によく出会う。そのさい、「帝国」とは何を意味しているのか。「帝国」論の背景に、いかなる国際秩序の変化を感じ取ろうとしているのか。本書
は、このような疑問にヒントを与えてくれるかもしれない。著者の前著『安全保障という逆説』を含め、類書は多いが、古今の思索を噛み砕いたうえでコンパクトに論じている書物として貴重だと思う。
 「序」によれば、表題は正確には「アナーキカルなグローバル・ガヴァナンス」というのだそうだ。ヘドリー・ブルの「アナーキカル・ソサイエティ」論つまり、「国家によって構成される一定の秩序をもったソサイエティ」たる国際社会についても、さらに進んで、国際機構やNGOを含めた多様なアクターによる「政府なき統治」たる「グローバル・ガヴァナンス」の議論も、包摂しようとしているのである。(続きを読む